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メッシュ農業気象データについて
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農研機構メッシュ農業気象データ(The Agro-Meteorological Grid Square Data, NARO)は、気象情報が農業現場で有効に活用されることを目指して、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発・運用する気象データサービスです。全国の日別気象データを、約1km四方(基準地域メッシュ)を単位にオンデマンドで提供します。提供する気象要素は14種類で、提供可能な期間は1980年(一部2008年)1月1日から現在までのデータだけでなく、1年後の12月31日までの未来のデータもシームレスに得られるところが大きな特徴です。
約1km×1km(基準地域メッシュ)単位で気象データが用意されています
アメダスなどの様々な気象データを標高などを考慮しつつ補間し、約1km四方(基準地域メッシュ)を単位に作成します。この図は茨城県のみを表示していますが、データは全国(約40万メッシュ)について作成されています。
このファイルから、メッシュ農業気象データの提供範囲と地域基準メッシュの確認を行うことができます(うまく表示されない場合はファイルをダウンロードしてください)。
作物の生育期間を通したデータが利用できます
データ提供期間のうち前日までについてはアメダスに基づくデータ、当日から最長26日先までは気象庁の各種資料に基づく予報値、その先には日別平年値がそれぞれ与えられ、シームレスに接合されています。図は、2017年7月8日にシステムが配信した茨城県つくばみらい市におけるこの年の日平均気温データです。図には、この地域の平均的な水稲の生育を併せて示しました。
データは日々更新されています
メッシュ農業気象データのうち、当日から最長26日先までは予報値です。数値予報モデルGPVやガイダンスに基づいて1日1回、午前8時ごろに更新されます。ただし、土・日曜日、年末年始、休日は更新されません。
下の動画は、北海道札幌市における2016年一年分の日平均気温が、メッシュ農業気象データシステムによって、1月1日から12月31日にかけて、どのような値で配信されたかを動画で示したものです。システムが配信する365日分のデータは、平年値が予報値に、予報値が観測値にと、内容が日々変化していることがわかります。図中、赤丸が“当日”で、この印より左側は過去、右側が未来です。
この図からもわかる通り、メッシュ農業気象データは、気象予測を含んでおり、気象業務法上の特定向け気象予報です。
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多彩な気象要素が用意されています
メッシュ農業気象データシステムには、農業にとって重要な以下の気象要素データが搭載されています。
日別値
気象要素 | 単位 | 記号 | 過去値 | 予報値 | 平年値 |
---|---|---|---|---|---|
日平均気温 | ℃ | TMP_mea | 1980年1月1日~前日 | 当日~26日先 | 2011年~翌年 |
日最高気温 | ℃ | TMP_max | 1980年1月1日~前日 | 当日~26日先 | 2011年~翌年 |
日最低気温 | ℃ | TMP_min | 1980年1月1日~前日 | 当日~26日先 | 2011年~翌年 |
降水量 | mm/day | APCP* | 1980年1月1日~前日 | 当日~26日先 | 2011年~翌年 |
APCPRA* | 2008年1月1日~前日 | ||||
1mm以上の降水の有無 | 1:有/0:無 | OPR | 1980年1月1日~前日 | 当日~9日先 | 2011年~翌年 |
日照時間 | h/day | SSD | 1980年1月1日~前日 | 当日~26日先 | 2011年~翌年 |
全天日射量 | MJ/m2/day | GSR | 1980年1月1日~前日 | 当日~9日先 | 2011年~翌年 |
下向き長波放射量 | MJ/m2/day | DLR | 2008年1月1日~前日 | 当日~9日先 | なし |
日平均相対湿度 | % | RH | 2008年1月1日~前日 | 当日~9日先 | なし |
日平均風速 | m/s | WIND | 2008年1月1日~前日 | 当日~9日先 | なし |
積雪深 | cm | SD | 1980年10月1日~前日 | 当日~9日先 | なし |
積雪相当水量 | mm | SWE | 1980年10月1日~前日 | 当日~9日先 | なし |
日降雪相当水量 | mm/day | SFW | 1980年10月1日~前日 | 当日~9日先 | なし |
予報気温の確からしさ* | ℃ | PTMP | なし | 当日~26日先 | なし |
*APCP: アメダスベースの過去値
*APCPRA: 解析雨量ベースの過去値
*予報気温の確からしさ: 気温予報値の標準偏差近似値
時別値
気象要素 | 単位 | 記号 | 過去値 | 予報値 | 平年値 |
---|---|---|---|---|---|
気温 | ℃ | TMP | 1990年1月1日01T~前日24T | 当日01T~9日先24T | なし |
相対湿度 | % | RH | 2019年1月1日01T~前日24T | 当日01T~9日先24T | なし |
下向き長波放射 | W/m2 | DLR | 2023年1月1日01T~前日24T | 当日01T~9日先24T | なし |
メッシュ農業気象データの予報値の精度
一般に、日別予報の限界は7日程度といわれており、メッシュ農業気象データもこれと同様の特性を持ちます。しかし、誤差低減の効果を平均値または積算値で評価すると、それはより長い期間まで認められます。
下の図は、メッシュ農業気象データシステムの日平均気温について、予報値の誤差と、「その日の気象値は平年値と同じになる」と予測した時の誤差との比を調べたものです(2011~2015年)。予報が的中する場合は100%、平年並みとしたのと差がない場合は0%となります。これを見ると、予報を日別に考えた場合(青丸)の効果はせいぜい7日程度に留まることが分かります。一方、これから先n日間の平均気温(赤丸)という観点で効果を見ると20日よりも先まで認められることが分かります。作物の発育等は個々の日の寒暖よりも積算した気温に強く影響されるため、このような特性は農業において有利です。
メッシュ農業気象データを長期変動(気候)解析に用いる場合は注意が必要です
メッシュ農業気象データは気象庁の気象データを元に作成しており、気象庁の年代による観測方式や統計処理方法の変更の影響をそのまま含みます。特に研究用途で使用される場合には、年代によってデータの質が異なる可能性についてご留意ください。
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メッシュの平均標高や都道府県範囲なども用意されています
メッシュの平均標高や面積、土地利用比率などの地理情報もメッシュデータとして整備されています。地理情報を利用すると、特定の県のだけの分布図の作成や、水田が分布する地域だけの平均気温の計算など、農業気象データをより高度に利用することができます。
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表計算アプリのシートにデータを直接取り込めます
マイクロソフトエクセルのWebクエリという機能を利用すると、データをワンクリックでシート上に読み込むことができます。例えば、下の図のように、緯度・経度、年次、気象要素を書き込んでボタンをクリックするだけで1年分の気象データを取得することができます。取得したデータを参照して計算を行えば、最新の気象予測に基づく様々な農業指標を作ることができます。
この機能をVBAマクロで実装したエクセルファイルを利用者専用ページから入手することができます。
Pythonならより自在にデータを処理できます
メッシュ農業気象データのデータ配信サーバーは、エクセルやPythonなど、アプリケーションプログラムからのデータリクエストに応答してデータを提供する機能を持ちます。これを利用すると、データの取得から処理、結果の出力までを一気に実行するプログラムをPythonスクリプトで作成することができます。
左図は、北海道における2017年6月~8月の有効積算気温分布図作成するPythonスクリプトです。コメントを除いて10行程度のものです。クリック一つで、右図のような図が作成されます。
メッシュ農業気象データ開発チームは、データの処理に便利な関数やサンプルプログラムを利用者専用Wikiで提供しています。
過去に提供したデータを再現することができます
システムは、日々の提供データをアーカイブに保存しています。そして、これを用いることで、利用者は、2011年以降の任意の日に提供した予報を再現することができます。通常のデータ処理に使用しているPythonプログラム一部を修正するだけでこれを読み込むようにできるので、気象予報の精度の検証や、予報基づく農業情報の有効性の検証を手軽に行うことができます。
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気候変化シナリオも搭載されています
システムには、全球気候モデル MRI-CGCM3、MIROC5、およびCSIRO-Mk3-6-0、GFDL-CM3、HadGEM2-ES(以上3モデルは2019.12より追加) を用いて、現在気候(1981~2005年)および温暖化ガス排出シナリオRCP 8.5、および、RCP 2.6 に基づく将来気候予測(2006~2100年)(2019.12より期間延長)を1kmメッシュにダウンスケーリングした気候変化シナリオデータも搭載されています。気象要素は、気温、降水量、および湿度、日射量、風速(以上3要素は2019.12より追加)です。データ形式を現在気象のデータと揃えてあるので、現在気象向けに開発した解析プログラムを温暖化影響評価に有効活用することができます。下の図は、メッシュ気候変化シナリオ(MIROC5, RCP8.5)データから、茨城県つくば市の2050年における日最高気温(黒太線)を取り出し、現在の平年値(黒細線)と対比して示したものです。
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ご注意:2019年12月に、historicalも含めて全てのデータが再計算されていますので、それ以前にデータを保存された方は更新をお願いします。
気候シナリオデータの使用には注意が必要です。
ここでは、ユーザーがプログラムの簡単な変更でデータを取得できることを示すため、メッシュ農業気象データの現在の平年値と重ねて示していますが、気候変化シナリオは、温暖化予測専用の全球気候モデルが、現在のカレンダーと無関係に計算しているものであり、例えば2017年10月23日に台風が日本に接近し上陸したわけではありませんし、2017年12月現在でラニーニャ現象が発生しているわけでもありません。あくまで近い将来の気候予測値として、仮想的に生成されたデータであることに留意してご使用下さい。
なお、気候シナリオデータセットに平年値はありません。